前十字靭帯(ACL)断裂のリハビリをする方へ【再発率を下げる】#42

競技復帰した人の前十字靭帯 (ACL) 断裂の再発率は約50%と言われています。高っ…⁉︎

なぜ再建手術、リハビリをして、這い上がる思いで復帰をしたにも関わらず、こんなにも高確率で再発してしまうのでしょうか?

 

もしかしたら、ACL断裂を偶然の怪我だと思っていませんか?

"たまたま転んでしまった"
"運悪くぶつかってしまった"
 

そんなあなたは再発率50%です。
医師が最初に診察する際の、受傷理由でこの様に答える人は非常に多いそうです。

 

ACL断裂に限りませんが、怪我に偶然はありません。必然的に発生します。
身体が発する黄色信号のサインを見逃して来た結果なのです。

 

もちろん怪我をしないに越した事はありませんが、"怪我の功名" という言葉があります。
しっかりと自分の怪我と向き合う事で、怪我をする前より "はるかに能力を向上させる事" は可能なのです。

 

再発率50%を5下げる方法は、怪我と向き合う事で必ず見えてきます。

 

同じ轍を踏まない為に、トレーナーとしての何かお役に立てればと思っています。

 

 

目次

ACL損傷の受傷パターン

ACL損傷はスポーツ膝障害で最も多く、高いレベルでスポーツを行なっている選手程、受傷率が高くなっています。
受傷のパターンは、次の3種類に分けられます。

□ 非接触型
全体の約7割がこの非接触型です。
バスケットボールやサッカーなどでの、ジャンプの着地、急な減速、方向転換などで受傷します。

□ 接触型
ラグビーやアメフトなどのコンタクトスポーツでの、タックルなどにより受傷します。

介達かいたつ
スキーなどで、スキー板やブーツからの道具による介達外力により受傷します。

 

必ずしも全てのパターンが、100%自分の身体に問題があるとは言えません。
しかし、そもそも身体の動作機能を、完璧に使いこなせている人は、ほとんど見た事がありません。

 

怪我をきっかけに、自分自身の動作機能を見直す事をお勧めします。
ポテンシャルの向上、怪我の再発予防に確実に繋がるはずです。

 

 

ACL損傷の仕組み

前十字靭帯(ACL)は脛骨 (スネ) と大腿骨を繋ぐ靭帯で、大腿骨に対して脛骨が前方にズレない様に固定しています。
また大腿四頭筋は膝関節をまたいで、脛骨粗面 (脛骨上部) に付着しています。

 

スポーツ動作の中で、“大腿四頭筋優位” の動作 (他の筋肉に対して、大腿四頭筋が強く働く状態) をしている場合、大腿四頭筋の収縮が強く起こった時に、脛骨が前方に強く引っ張られACLの損傷が生じます。

ACLを損傷させない為には、大腿四頭筋優位の動作ではなく、“殿筋群優位” の動作を行える様にする事が重要になります。

 

“ハムストリングス” の強化も有効です。
しかし、股関節伸展動作で大殿筋が弱くハムストリングス優位になり過ぎると、“ハムストリングス損傷” の怪我のリスクが上がります。

 

 

ACL再建手術からのリハビリ

リハビリには、

メディカルリハビリテーション (MR)
アスレティックリハビリテーション (AR)

の2つの段階のリハビリがあります。

 

競技復帰を目指し、高いパフォーマンスを出せる身体を作る為には、MRとARの両方を確実にこなす必要があります。

 

 

メディカルリハビリテーション (MR)

MRとはACLの再建手術後のリハビリから、日常動作への復帰を目指すリハビリです。
主に低下した関節可動域や、筋力の回復の為のトレーニングを行います。

MRは主に医療施設で行う事が多く、僕たちトレーナーがこの段階のリハビリに、携わる事はあまり多くありません。

 

 

アスレティックリハビリテーション (AR)

競技復帰や再発防止を目指すにはARにいかにして取り組めるかが “肝” になります。

の記事の中などでも、お話ししている様に “怪我をした場所に怪我した原因はありません”

100%とは言いませんが、ほとんどの場合は当てはまります。

 

 

ACL断裂の場合は、以下の3つの因子のいずれか、または複数に当てはまる事が多いです。

□ 股関節の可動性の欠如
□ 足関節の可動性の欠如
□ 腰椎骨盤帯の安定性の欠如

 

これらの問題により、“大腿四頭筋優位” の動作になり、膝関節に過剰な負担が掛かる事で、ACLの損傷が起こります。

 

 

ARで重要な事は、ひとつは
“怪我を引き起こした原因を見つける事”

 

しかし、この因子の改善だけでは、競技復帰には不十分です。

大切な事は、様々な方向への動作の中で “殿筋群優位” の動作を身につける事です。

 

少し発展的なARですが、ARを紹介する動画があったので、参考にしてみてください。
この “殿筋群優位” の動作を身につける事ができれば、再受傷の防止だけでなく、受傷前よりはるかに高いパフォーマンス能力を、身につける事が可能になるのです。

 

殿筋群優位の動作の身につけ方は、説明すると長くなるので、また別の記事で書きたいと思います。
必ず殿筋群優位の動作が身についてから、動画のような高強度のARを行ってください。

(2018年8月6日更新)

 

 

まとめ


ACLの断裂は偶然の怪我ではなく、起こるべくして発生します。
しかし、適切なリハビリをこなす事ができないと、再発率は高まります。

 

再建手術後は、靭帯が骨に定着するまで、ある程度の時間は掛かります。

“競技復帰に焦ってはダメです”
焦らず確実にリハビリをこなす事で、受傷前よりも高い能力を、必ず身につける事が可能です。

 

その為に “今” できる事を探し、取り組んでください。

“怪我の功名” を信じ、現状と向き合う事で、必ず良い結果に繋がります。

 

今日の一言

僕自身も、頻繁に怪我に苦しめられて来ました。職業病かもしれませんが、その度に再受傷しない身体の動きを研究して来ました。
生まれつき身体が強く、怪我をしにくい人もいますが、そういう人は一発の怪我が重く、致命傷になるケースもあります。
身体が弱く怪我しやすいタイプの方が、ある意味敏感に身体のエラーを感じ取れるので良いのかな?と思ったりもします。

実はスポーツ選手も小さな怪我は公表せずに、お忍びで病院に通い、静かにリハビリしている場合がほとんどです。選手にとって戦線離脱は死活問題ですからね。

 

 

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