スキー技術向上の為に高重量スクワットが悪とされる事の真偽について考えてみる #25

『高重量スクワットをするとスキーを横に押さえる力が付きすぎる』
スキーヤーの方々とオフトレの話をすると度々耳にするまことしやかなこの噂…

少し長くなりますが、トレーナー目線でこの真偽について考えてみたいと思います。

目次

スキーに高重量スクワットは不必要?

確かに、
トレーニングを行う上での
『動作を潜在意識で行える様に身体に染み付ける』という考えからすると、

「高重量スクワットを行う事で “地面を蹴る” という動きを身体が容易に行える様になる」

「スキーを横に押さえる力が付きすぎる」

という考えに至るのは一見普通であり、私も確かに!と一瞬納得しかけました…がしかし

待てよ…なんだか腑に落ちないこの話

目の前に貼られている、はち切れんばかりの太ももをしたW杯選手のポスター

ちょうど開催されていた平昌オリンピックで、
どのアルペンレーサーも

太い…

ももが太い。

確実にスクワットをしている脚。

あの華々しく活躍をしている大谷翔平選手も肉体改造で身体を大きくしたが、しなやかさは失われていない…

世界レベルのアルペンスキーヤーには必要で、
技術系のスキーヤーには必要ない?

高重量スクワットを行う事で技術が落ちる?

果たしてそんな事が実際あるのだろうか?それとも、これもまた日本に根強く残る、トレーニングを “悪” とするスピリットによる迷信なのか…

見逃がされたエキセントリック

トレーニングを始めて重量が扱える様になると、必ずと言っても過言ではなく、誰もが一度は陥る“大きなミス”がある。

それは

エキセントリックを疎かにする事

少し専門的なお話をすると、
筋肉の動きには大きく分けて “コンセントリック収縮” と “エキセントリック収縮” がある。

▷ コンセントリック収縮 → 筋肉が縮んでいく局面での筋収縮

▷ エキセントリック収縮 → 筋肉が伸ばされる局面でそれに対して抵抗する筋収縮

問題のスクワットでの筋肉の働きでは

脚を伸ばす局面 → コンセントリック収縮

脚を曲げる局面 → エキセントリック収縮

に当たる。

スクワットで扱っている重量を10とすると…
コンセントリック収縮では10以上の出力が必要であるのに対し、エキセントリック収縮では10以下の出力で動作が可能です。

つまり
エキセントリック収縮では限りなく出力を0に近づけても動作が可能になるのです。

まさに高重量トレーニングで陥りやすい“大きなミス”がココです。

“重量を挙げる” という目的達成に偏り、コンセントリック収縮のみに集中しエキセントリック収縮を軽視したトレーニングを行ってしまう事です。

実は、適切にエキセントリック収縮を行えていない事で、適切にコンセントリック収縮が行えていない可能性があります。

スキーに谷回りを作る為に山回りがある様に
トレーニングにもコンセントリック収縮を作る為にエキセントリック収縮があります。

筋肉はゴムの様な特性があり、強く伸ばされる事で強く縮ませる事が可能(伸長反射など)になり、その能力が身につくのです。

神経筋コントロールの向上を考えても、エキセントリック収縮は固有受容器と呼ばれる神経伝達組織を強く刺激し、能力の向上を図る事が可能なのです。

トレーニングにおいてエキセントリック収縮は動作の1/2を占めています。
この動作を鍛える事を疎かにしては、適切なコンセントリック収縮も行えません。
この2つの動作は “表裏一体” なのです。

適切なコンセントリックとは?

スクワット行っている人を見ていると
曲げ切った時と伸ばし切った時で足裏の荷重点が前後している人をよく見かけます。
大抵の場合、曲げ切った時につま先寄りに力が掛かってます。

重量を上げる為のスクワットとしてはこれもありかもしれません。

しかし

脚の曲げ伸ばしによって、自分の意思とは別に体軸が前後する能力が身に付いた場合はどうでしょうか?

これは考えるまでもないと思いますが、
スキー動作の妨げになると考えられます。

『脚を伸ばす時に、前に出た体軸を後ろに戻す』
この時の力のベクトルは、垂直方向ではありません。

つまり、
地面に垂直に力を伝える能力としてもロスが生じています。

体軸が前後しないようにスクワットを行う為には、足首・膝・股関節が適切に動く必要があります。

脚を曲げた状態からスクワットを始める人はあまりいないと思いますので、この3関節を適切に動かすコンセントリック収縮を行う為には、先ず適切なエキセントリック収縮が必要になるのです。

真偽についてのまとめ

今回はよく噂で聞く、
『高重量スクワットがスキーにおいてマイナスになるのか?』
の真偽について考えてみました。

結論をまとめると

▷ やり方によってはマイナスになる事もあるが、適切に行えばむしろプラスになる

▷ 伸ばして押す力を鍛えるだけではなく、曲げて耐える動きにもフォーカスすることが重要

▷ 曲げる動作のコントロール能力向上が、適切な方向に押す力発揮能力向上にも繋がる

自発的な曲げ伸ばし動作をスキー運動の中で使うのかどうかは別として、

『適切にトレーニングする事で、スキー技術の向上に繋がる身体のポテンシャルを上げられる!』

というのが今回の結論です。

もちろん異議もあるかとは思いますが…

説明不足な点もありますが、今回はこのあたりで失礼します。

ありがとうございました!

この記事が気に入ったら
フォローお願いします

最新情報をお届けします

Twitterも更新中!

おすすめの記事