#85 ブログの箸休め② 『黒船テスラ・モーターズの謎』(再び小説風)

2018年6月
僕が住む街の大型ショッピングモール "ラゾーナ川崎" が2度目の大規模リニューアルオープンをした。
   
 
 
各店舗が段階的にオープンし、残すはメインストリートに当たる2階ルーファ広場の入口横一角の店舗のみとなった。
    
 
 
 
そしてオープンまであと数日
 
工事の為に仕切られていた囲い鋼板がいよいよ取り外され、同時に僕の "数ヶ月間の格闘のゴング" が鳴ることになったのであった。
   
 
 
その鋼板が取り外された時、僕は衝撃的な光景を目の当たりにしたのだ。
    
 
 
 
『TESLA』
 
近未来的で不気味な光を放つ看板が露わになったのだ。
    
 
 
 
 
 
2階にディーラー⁉︎⁉︎
   
 
 
何とあの世界を騒がす "奇行の経営者イーロン・マスク" 率いる電気自動車界の黒船 "テスラ・モーターズ" が、日本に4店舗目の直営店をオープンさせようとしていたのだ。
  
 
 
しかし、僕はすぐさま疑問に思った。
 
 
ラゾーナ川崎を知り尽くしている僕には、どう考えても車の搬入経路の皆目検討がつかなかったのだ。
  
 
 
いくらあのテスラでも、この難題には答える事ができないであろう。
  
僕は2日後に起こる事件を前に、安易にもそう確信していた。 
 
 

 
イーロン・マスクと言えば、宇宙開発会社スペースX、太陽光発電会社ソーラーシティ、そして電気自動車会社テスラ・モーターズを率いている。
 
 
2026年火星移住計画を唱えたり、ロケットに車を積んで飛ばしたりと彼の奇行には世界が注目している。
 
あの名画アイアンマンの主人公トニー・スタークのモデルにもなった男だ。
 
  
 
 
2階ルーファ広場一角に露わになった『TESLA』は店内の広いスペースを残し、急ピッチでオープン準備が進められていた。
 
 
 
まさか、パンフレットのみの店舗か?
 
 
いやいや何か近未来的な映像技術で、空間に車を映し出すのであろう。
 
 
 
"二階から目薬" ならぬ

 
 
『二階にディーラー』だな!
 
 
なんて大して面白くない戯言を考えていたが、

  
 
その2日後に事件は起こった
 
 
 
 
 
 
(2日後)
新宿で飲んだくれた僕は、終電で地元川崎に到着した。
 
 
駅と直結するラゾーナ川崎に向かって歩いている途中、僕は目の前に現れた衝撃的な光景を見て一気に酔いを覚ました。
 

 
一瞬、幻覚かと思ったが、
 
 
間違いない…だ。
 
 
 

 
 
イーロン・マスクは僕をあざ笑うかの様に、店の中に収めずその『T』のエンブレムを付けた車体を見せ付け難題に即答した
 
 
 
 
(なぜだ…⁉︎)
 
再度頭の中で搬入経路を探してみたものの、現実的な答えは見つからない。
 
 
 
惨敗か…
 
 
 
いや!!
 
 
僕は一瞬あげかけた白旗を下げ、この難題に答えを出すべく寝る間を惜しみ考えることにした。
 
 
 
 
  
 
 
 

(…数ヶ月後)
 
遂に、僕の解答が全て出揃った。
 
 
 
 
僕の解答はこれだ。

その1 原始的な方法

車のパーツを細かく分解して、お店で組み立てた。
 
 
 
その2 現代的な方法

ラゾーナと直結する駅の階段に、ハメ込む三角形のパーツで坂道を作り上った。
 
 
 
その3 近未来的な方法

将来的に車は空を飛ぶと言われているが、実は道路交通法的にまだ公にしていなだけで、テスラ車にはこの機能がすでに搭載されていて空からラゾーナのルーファ広場に着陸させた。
 
 
 
この3つだ。
 
完璧な解答が出揃った。

 
 
 
 
2018年10月某日
雲ひとつない青空が広がる肌寒い秋晴れの朝。
 
夜勤明けの僕は磯丸水産でビールを片手にカニ味噌を食べていた。
 
 
 
同僚と軽く労をねぎらい帰路に着いた僕は、あまりの空の清々しさにこれから寝る事に少し罪悪感を感じていた。
 
 
 
 
と、その時だった。

 
 
 
 
『テスラへGO!』
 
 
秋空が僕にそう囁いた様に聴こえたのだ。
 
 
 
僕は眠たい顔をひっぱたかれたかの様に答えた。

青木
御意。

 
 
 
 
お店のオープンまで時間があったため、僕は早まる気持ちを抑え、1度帰宅して仮眠を摂ることにした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
寝坊した。
 
 
カーテンを開けると、陽が傾き掛けていた。
 
 
 
 
そして、僕は急いでシャワーを浴び最短距離で『テスラ』へ向かった。
 
 
 
課されたミッションはただ1つ
『車の搬入方法を聞き出すこと』
 

 
 
初の外車ディーラーに、少し緊張しつつも何食わぬ顔で入店した。
 
 
 
 
僕はしれっと店内の掲示に目を通していると、予想通り若い店員が近寄って来た。
 
 

店員
如何ですか?ご興味お持ちですか?

 
 
僕は答えた。

青木
はい!興味あります!(搬入方法に)

 
 
 
そして、僕は店員と共にテスラのSUV車モデルXに乗り込んだ。
 
 
 
 

青木
最近この車走ってるのよく見かけますよ!

店員
え、どこでですか?

青木
川崎でよく見ますよ!

店員
あー、それ試乗車ですね。

青木
…(´д` ;)

 
 
 
的な会話を交わしながら、先進的な車のスペックの説明を受け、その時が来るのを胸の高鳴りを抑えながら待ちかまえた。
 
  
 
僕はすっかり店員にペースを掴まれ、17インチの液晶画面を搭載したインテリアに心を奪われ掛けていた。
 
 
 
 
そして遂に、
 
 
 
そのチャンスは突如として訪れた。

店員
何か他に気になる点などございますか?

 
(キターーー、今しかない…‼︎)

青木
はい!!あります!!

 
なぜか僕と店員しかいない車内で、小さく挙手をしてしまった。
 

青木
えっと、この車って…どうやってここまで運んだのでしょうか?

 

遂に、僕はミッションをコンプリートさせる数ヶ月間の戦いを終わらせる一手を打ったのであった。
 
 
 
僕は息を飲んで、店員の回答に耳を傾けた。
 
 
 
 
(ドックン!)
 
 
 
 
(ドックン!!)

 
 
 
 
 
(ドックン!!!)
 

 
 
 
 
 

店員
え?ああ。

2階の駐車場からですよ。

青木
(゚Д゚) (゚Д゚) (゚Д゚) …エッ⁉︎

青木
いやいやいや、途中にガラス扉があるじゃないか!

店員
あぁ、外しました。

青木
(ToT)(ToT)(ToT)ウッヒョーーーーン!

 
 
僕は大きく開いた口のアゴを自らの手で押し戻した。
 
 
 
 
外す…
 
 
その手があったか…
 
 
 
 
 
店員の一撃で戦いは終わった。
 
 
 
 
僕は必死に試乗に誘導しようとする店員の攻撃を力なくかわし、テスラを後にした。
 
 
 
帰り道すっかり冷え込んだ空気を吸い込みながら、僕は昔読んだ本に書いてあった、スティーブ・ジョブズの言葉を思い出していた。
 
 
 
 
『Think simple』
 
 
 
言葉の本当の意味は、常に経験した者にしか味わえない痛みと共に諭される。
 
 
 
 
また1つ僕の頭の中でレベルアップした時の音楽が聴こえた。
 
 
 
 
 
 
(おしまい)
 
 
 

編集後記

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今回は調子に乗り少し長くなってしまいました。
 
不純な動機でテスラに行ったものの、あまりのハイスペックにすっかりファンになってしまいました。
十数年後来るであろう自動運転社会の中心は、このテスラかもしれません。 
note小説アカウントはコチラ

 

この記事が気に入ったら
フォローお願いします

最新情報をお届けします

Twitterも更新中!

おすすめの記事