スポーツの試合や練習の後に、ジョギングやストレッチなど軽い運動をする事で、翌日に疲労を残さない様にしている人も多いかと思います。
これらは体のコンディションを整えるトレーニングである事から、スキー界では "コントレ(コンディショニング・トレーニング)" とも呼ばれています。
よく「筋肉に乳酸を溜めない様に!」
という話を耳にしますが「乳酸は疲労物質ではなくエネルギーである」と残念ながら "乳酸疲労物質説" は否定されています。
では、乳酸の除去が疲労回復と関係ないなら
「わざわざ、エネルギーを使ってジョギングなんてしたら "余計に" 疲れるんじゃない?」
と、思いませんか?
今回は「スポーツ後に行う軽い運動の疲労回復効果の真偽」についてお話いたします。
目次
筋疲労の原因
結論からお話すると "スポーツ後の軽い運動" は疲労回復を高める効果があります。
しかし、決して乳酸を除去したからではありません。
まずは、疲労のメカニズムから見ていきましょう。
以前の記事で、体の主な疲労は
□ 筋疲労
□ 神経疲労
の2種類!と言うお話をしましたが、スポーツで蓄積される疲労は主に "筋疲労" です。
実は、現代の科学でも筋疲労の原因ははっきりとは解明されていません。
しかし、以前の定説「乳酸疲労物質説」は様々な研究で否定されています。
(日本では東大の八田先生などが乳酸に関して研究されています、非常に参考になる動画がアップされているので興味のある方はご覧ください)
そこで、現在考えられている筋疲労の有力な説は、
□ 筋肉の酸化ストレス
□ エネルギー源の筋グリコーゲンの枯渇
この2つによって、筋疲労を感じるのではないかと考えられています。
「筋肉の酸化ストレス」に関しては、少し難しいお話なので今回は割愛しますが、激しい運動を行い二酸化炭素の排出が増える事によって、体が酸性に傾き "酸化ストレス" が生じます。
「エネルギー源の筋グリコーゲンの枯渇」に関しては、筋肉を動かす事によって、筋肉に貯蔵されている "グリコーゲン" が消費されます。
体にはエネルギー源である糖質が、グリコーゲンと言う形で430~450g貯蔵されています。
体の大きさによって貯蔵量は異なりますが、
筋肉に筋グリコーゲン約300g
血液の中に血中グルコース20~50g
この様に貯蔵され、激しい運動により筋グリコーゲンが枯渇すると、肝グリコーゲンや血中グルコースが利用されます。この "筋グルコースの枯渇" が、疲労の原因の一つであると考えられています。
軽い運動の疲労回復効果
スポーツを行う人にとって「いかにして疲労を溜め込まない様にするか」は、パフォーマンスの向上や怪我予防の為に非常に重要な課題です。
スポーツやトレーニング後の軽い運動によって体に "酸素を取り込む事" で、疲労回復を促す事ができると考えられています。
適切に酸素を取り込む事で、体を酸化ストレスから守り "筋細胞への栄養補給" をスムーズにします。
運動の目安は「20~30分の軽いジョギングやスイム」です。
心拍数を大きく上げずに呼吸を整え、ジョギングであれば呼吸量を増やしすぎず、鼻呼吸で酸素を取り込む事が重要です。
また軽い運動を行う事で、スポーツによって覚醒している自律神経も、リラックスモードの "副交感神経が優位の状態" に整います。
これにより「疲れているのに寝れない」と言う "自律神経の乱れ" も防ぐ事が可能です。
もちろん疲労回復の為には、リカバリートレーニングだけではなく
□ 栄養補給
□ 質の高い睡眠
□ バランス調整による神経疲労の回復
など、やるべき事はたくさんあります。
是非、激しいスポーツに取り組む人は、体のコンディショニングを大切にしていただければと思います。
今ではコンディショニングトレーニングは、自分の体と対話する大切な時間です。
痛みを感じる事の少なかった以前は体の声を聞く事ができなかったので、これはこれで大切なステップなのです。