5月に "緊急事態宣言" が明け、東京都でスポーツジムの段階的な規制緩和の繰上げされた事もあり、6月に入り多くのスポーツジムが "営業再開" をしました。
しかし、以前もお話しした様に、早期のクラスター発生の影響による規制、感染懸念による会員離れ、幽霊会員の退会、休館によるダメージは甚大であり、大手スポーツジムが "依然厳しい状況" にある事には違いありません。
そして、約2か月間の休館を利用し、各スポーツジムは、それぞれ「オンラインを活用したサービス」の展開を開始した企業、かたや感染対策だけを施し「既存サービスだけ」を再開した企業といった形で、そのアフターコロナ、いや "ウィズコロナ時代" を見据えた、対応策は大きく分かれました。
フィットネス産業はこの厳しい状況の中、果たして今後どの様な対策をとるべきなのでしょうか?
目次
大手ジムの分かれたサービス展開
緊急事態宣言が解除され、"外圧" により変化を求められた大手スポーツジムの、その対応は様々でした。
・既に、オンラインレッスンを有料サービスとして展開を始めた企業
・YouTubeやSNSでの動画配信やライブレッスンを行うことで、フォローワーを集める企業
・感染対策を施し既存サービスだけで営業再開した企業
もちろん3つ目の感染対策である、マスクやフェイスシールド、器具の消毒、入場規制、体調検査、マシンの間引き利用など、 "運動" を考えた時に「安全面でどうなの?」と思うことまで、どのスポーツジムも "徹底した対策" を施しています。
これらの対策は、逆風が吹くスポーツジムを、安心してご利用していただく為、また自粛警察を黙らせる為の、ある種の「安全アピール」として致し方ない部分はあります。
しかし、これらの対策をしただけでは、今後長く続くであろう厳しい状況を打破できる訳もなく "新たな取り組み" をスタートさせる企業もあります。
「あまり密集したところに行きたくないけど、運動はしたい」
というニーズは必ずあり、そこで有効なサービスが既知の "オンラインサービス" です。
既にワンコインで1レッスン受けられるサービスや、サブスクリプションでの受け放題など、有料オンラインサービスの展開を始めている企業も見られます。
また、現在は有料化はせず、YouTubeやSNSでの動画配信やライブ配信を行う企業もあります。
いずれも、会員や会員外からの集客やフォロワー集めなど "新たな層への新たなサービス展開の礎" になる可能性はあるはずです。
しかし、一気に浸透したZoom会議やウェビナーと比べて「運動×オンライン」の普及は、なかなかハードルは高く、
・高齢者が集まりにくい
・客単価が安い
・家で動くスペースがない
・YouTubeなどの無料動画との差別化が難しい
・そもそもそこまでして運動をやりたくない
などなど "課題は山積み" です。
もちろん需要は増えつつあるものの、今見ている限りは、まだまだ「黎明期にあるなあ」と感じています。
やっぱりジムで、スイッチが入って行なっていた運動も、「家で、、」となると、そこまでして行動できる人はそう多くはありません。
「健康維持のための社会インフラ」とは言えど "人間の三大欲求の外にある運動" の優先順位を、上げさせる事は容易ではないのです。
では退会者が激増し、新規入会者が期待しにくい中、どの様なところに価値をつけ、差別化を行い。収益を上げて行く事ができるのかを考えてみます。
今後必須になるサービス戦略
このウィズコロナ時代の中、どの様なサービス展開が有効なのかを、いくつか考えてみます。
混雑状況の見える化
まず、やるべき事は "お客様の分散化" です。
やはり利用者は "密な状況" を避けたい訳でありますし、来館して「入場規制で入れない」なんて事ほど馬鹿げたことはありません。
現在は、ほとんどのスポーツジムが全店利用可能である(会員種別によって規制はあるかも)と思います。
また、テレワークが主となった人達は、日中に時間を作ったり、今までより "時間の融通" が効く様になってきています。
そこで、今まで混んでいた時間帯や店舗から、違う時間帯、店舗へ会員を "分散させる事" が必要です。
例えば、アプリなどにアクセスし「各店舗の混雑状況」が "リアルタイム" でわかれば、自然とお客様は分散します。
このサービスは、既存の会員の利便性だけではなく、新規会員を獲得する為の大事な "アピール宣材" となる事は間違いありません。
個人的に "今すぐ導入すべきサービス" No.1です。
チェックインの自動化
近年増加している24時間無人ジムなどでは、扉を入ればチェックインされ、扉を出ればチェックアウトされます。
しかし、このご時世、未だにチェックインを "有人のカウンター" で行っているスポーツジムが多くあります。
入会・退会手続きもオンラインにすべきです。
初回のお客様を案内する人だけを置いておくだけで、フロントスタッフはいらなくなり"人件費を大幅に削減" させる事ができます。
収益源を増やすだけでなく "無駄なコストカット" なくしては生き残れないのではないでしょうか?
今すぐ、フロントを取り払った方が良いです。
靴なんて履き替えなくていい
そもそも、靴を履き替える境目が曖昧なジムも多く、履き替える必要性がわかりません。
感染症対策を考えた時に "土足反対派" も多いかもしれませんが、ロッカーに入室する時に靴を脱いで上がり、各ロッカーにシューズケースを設置すれば良いと思います。
そうすれば広いシューズロッカーエリアを撤廃でき、トレーニングエリアの拡張が可能になります。
キャッシュレス
これは言うまでもありません。
金銭のやり取りは人件費やお金を数える仕事の軽減、感染リスク共に減らせます。
中途半端に「キャッシュレス決済も可能です」では、意味をなしません。
「オンリーキャッシュレス決済」です。
店舗数の縮小
多くの会員が退会し、スポーツジムにネガティブなイメージが浸透している今、オフラインでの設備を提供すると言う形でのフィットネスは、明らかな "供給過多" であります。
その中で、多くの店舗を抱える企業が全ての施設を黒字化させる事は、容易ではありません。
もちろん店舗をたたむ事にも莫大なお金がかかりますが、今後を考えると足を引っ張る "赤字経営のお店" を減らし、人が集まる店舗に "会員を集中させる事" が重要になるはずです。
オンラインサービスの展開
「ん、まだ導入してないの!?」
資金繰り、システム、セキュリティなど様々な問題があるかもしれませんが、今後 "必須のサービス" である事には違いありません。
今現在導入が見られるサービスとしては「スタジオレッスンのオンライン化」や「ワンポイントエクササイズ」の配信などだと思います。
それだけではなく「マンツーマンのトレーニング指導」なども、オンライン化させて行く必要があります。
パーソナルトレーナーなど指導にあたるスタッフも、自宅から配信できる様な型にして行く必要性があります。
オンラインサービスは個人でも十分成り立つので、集客を企業が行う事でマージンを取るくらいで、活動の自由化を色濃くした契約の見直しが必要になるかもしれません。
まだまだ、継続的に参加いただくには "課題が山積み" ですが、カタチを変えながらも今後必須のコンテンツになるはずです。
もちろん "サブスクモデル" で、サービス展開をして行く事が有効です。
オフラインサービスの価値を上げる
以前、AI失業時代の記事でも書いた内容ですが、徐々にオンラインのサービスが低所得者向け、オフラインのサービスが "高所得者向けのサービス" として変化し始めているかもしれません。
オンラインとの棲み分けをする為には、オフラインのトレーニング指導やグループレッスンは "高額商品" に設定して行く必要があります。
例えば、グループレッスンでは、スタジオが2つある施設の場合、1つのスタジオではスクリーンでの "バーチャルフィットネス" を流すスタイルのレッスンにする。
一方のスタジオでは人が行う "リアルのレッスン" が行われますが、有料化する。
つまり、オンラインやバーチャルのレッスンは受け放題ですが、"リアルのレッスンは有料化" にすると言う事です。
そうすれば人件費も大幅に削れ、収益も増やせます。
プレミアム会員を作る
会員種別も、優先入場、レンタルサービス、サービスドリンク、パーソナルトレーニングチケット付きみたいな形で月5万円ほどの "高価格帯のプレミアム会員" を作る事が有効です。
例え全体の3%程だけでも、この様な客層を集客できれば、大きなプラスになります。
いくつか思いついた有効な戦略を上げてみましたが、兎に角、収益源である会員が激減した中で生き残る為には「固定費を削り、収益を増やす事」を行っていく他ないはずです。
今後も厳し状況が続くと思われますが、一フィットネス従事者としては、なんとか持ち堪えて欲しいと願っています。
外圧が掛からなくては変えられないものを、ここで一気に変えないと、明るい未来は想像しがたい。
オンラインも課題は多くありますが、やはり遠方にお住まいの方を見させていただける事がとてもGOOD、幅が広がりました。
今ある問題も、近い未来の5Gの普及で、一気にクリアになるのでは。