今日は意外と知られていない、ワンポイント運動学のお話です。
解剖学や運動学のお勉強をしていくと「あれ?教科書と違うじゃないか!」と思う様な事が度々出てくるのですが、これがまた研究途上である科学の面白さでもあります。
という訳で、背中を縦断する大きな筋肉 "脊柱起立筋" のお話をしたいと思います。
脊柱起立筋と言えば "背筋運動" の様な、体を反らす時に働くイメージがあると思います。教科書を見てもこの様な時に作用すると書かれています。
では、一緒に実験をしてみましょう。
「立った状態で脊柱起立筋(腰)に手を当てて、体を反してみてください」
どうですか?脊柱起立筋に力が入っていますか…?
目次
教科書による脊柱起立筋
脊柱起立筋は、腸肋筋、最長筋、棘筋の3つの筋肉の総称です。
この脊柱起立筋は、背面を縦断し、体の柱である背骨を支える大きな筋肉なのです。
人体解剖実習で見ても、腰部の腸肋筋と最長筋が重なる部分は、非常に分厚いのが確認できました。
また、脊柱起立筋の作用は、筋肉が縮む事によって「背骨の伸展・側屈・回旋」の動作を助けます。
ここまでが、おおよそどの教科書にも書いてある脊柱起立筋の働きだと思います。
脊柱起立筋の意外な作用
冒頭の実験に話を戻しまして、立った状態で脊柱起立筋を触れて体を反らすと、脊柱起立筋のスイッチが切れる事に気づくと思います。
「あれ?体を反らす時に作用するんじゃなかったっけ?」
と思うかもしれませんが、脊柱起立筋が、体を反らす作用で働くのは、うつ伏せの時やデッドリフトの様な抵抗を加えた運動をする時だけなのです。
それでは、もうひとつ実験です。
「立った状態で脊柱起立筋を触れてお辞儀をしてみてください」
どうですか?
脊柱起立筋のスイッチが入るのがわかると思います。
つまり、脊柱起立筋は体をお辞儀した時に、体が前に倒れない様に働くのです(遠心性筋収縮)。
一方で、体を後に反らす時には、表側の "腹筋" が同様に働きます。
この様に、脊柱起立筋の作用は立位において、教科書に書いてある作用と180度違う作用をするのです。
もしこれを聞いて「楽し~!」となったあなたは、かなりの筋肉フリークです!「あ、そうなのね」と思われた方は、すみません聞き流してください‥汗
脊柱起立筋以外にも、この様に教科書に書いていない様な働きをする筋肉は多々あります。
整体やトレーニングの指導を行う上で、体の解剖学や運動学を正しく理解しているかどうかで、月とスッポンくらいその質が変わります。
僕も体の勉強をするたびに、その奥深さに頭を抱えるばかりですが、現場で役立てられる様にまだまだ勉強し続けたいと思います。
そして、5年後には今の情報の15%しか通用しなくなります。
足を止めた瞬間に、いとも簡単に時代遅れになるのです…超大変!一生勉強、ですね。