"ドローイン" という言葉を聞いた事があっても "ブレーシング" という言葉には、馴染みがない人も多いのではないでしょうか?
実は "ドローイン" は「腰痛改善の為のエクササイズ」として、十数年前に注目を浴び、体幹部のインナーマッスルを鍛える手法として急速に広まりました。
そして、スポーツやトレーニングの現場でも "ドローイン" という言葉が度々使われる様になりました。
しかし、ドローインは腰痛改善に効果があっても、スポーツやトレーニング動作にそのまま活用しても本当に良いのか?
今回は「ドローインとブレーシングの違い」についてお話しします。
目次
ドローインの普及と現在
ドローインの歴史は、オーストラリア人の研究者によって「腰痛患者は腹横筋(腹部のインナーマッスル)が上手く使えていない」という事が発見され、"腰痛改善エクササイズ" として活用させた事が始まりです。
ドローインとは 『腹部を強く凹ます事によって、深部にある腹横筋の働きを強める』 という手法です。
腹部のインナーマッスルの中で "腹横筋" だけをピックアップし、他の筋肉を働きを軽視したこの手法は、冷静になって考えると『一方向だけの力を強めても腹圧は高まらず、腰椎や骨盤を安定させられない』と言うことに気づくかもしれません。
しかし、何故か疑われる余地もなく「運動の中でも体幹部を安定させる手法」として活用され、拡散されていきました。
実は、これに気づいた "ドローインを使った指導をしていたトレーナー" も、誤りを認め、現在は "ブレーシング" を推奨している人は少なくありません。
体作りの情報も、最新の情報と世の中に普及している情報には、数年から十数年単位の "タイムラグ" が存在します。
未だに『運動中に水を飲むな!』とか『体を柔らかくしたきゃ酢を飲め!』とか言う人がいたら、激しくつっこまれるかと思いますが、情報は時代によって常にアップデートされ、今信じているものが2~3年後に覆っている事も少なくありません。
ブレーシングを使うべき理由
ドローインに対する "ブレーシング" は『アウターの筋肉も含め外からの圧力に抵抗する様にお腹に力を入れ、腹部全体ををボールの様に膨らませる』 という手法で、お腹を膨らませ正に "腹圧" を高める方法です。
腹部のインナーマッスルには
■ 内腹斜筋
■ 多裂筋
■ 骨盤底筋群
■ 横隔膜
があります。
これらの筋肉が、腹部の深層部を四方八方から包み込む様に覆い、同時に緊張させる事で腹圧が高まります。
例えるなら "ゴムボールを前後左右上下の方向から押さえつけた状態" です。ボールの中の圧力が高まる事が想像つくかと思います。
しかし、骨盤が約12度の前傾を理想とするのに対して、ドローインで前方からの圧力を高めると骨盤が後傾し、角度が小さくなります。
普段トレーニングで高重量を扱っている人なら「スクワットやデッドリフトで "ドローイン" でお腹を凹ませたら、力が入らない事」は体感的にもわかると思います。
腹横筋を鍛える為に、ドローインが有効である事は確かです。
しかし「実践の動作の中でドローインを使う事は、ある意味 "自爆行為" であり、何一つメリットがない」と個人的には思っています。
まとめ
体幹部を安定させる手法として「ドローインが絶対有効」いう誤った認識が蔓延しています。
しかし "ブレーシング" を使う事でしか、適切に腹圧を高め腰椎や骨盤を安定させる事は困難です。
もし今までドローインを使っていたとしたら、今からブレーシングに切り替える事を強くお勧めします。
指導者の立場であれば 『やっぱドローインよりブレーシングが良いみたい!てへぺろ』で今日から方向転換してみてください。きっとお客様も最新(?)の謎の横文字を連呼するあなたに惚れ直すハズですよ。